
画期的な入試制度スタート

17歳で入学できる飛び入学制度で知られる千葉大学は、2009年度入試から、理数科目に秀でた受験生を対象に新しい入試を始めました。名付けて「理数大好き学生選抜」。高校時代に優れた理科・数学の研究活動を行った学生を、入試と入学後の学習環境で優遇します。少人数教育で先進的な実験を続ける一方、「教職員が学生の近くにいて、学生と一緒に泣き笑いしながら学ぶ」大学づくりを目指す齋藤康学長は、教育改革にも力を注いでいます。普遍教育(1)には、今春から少人数制のテーマゼミが誕生し、専門教育では他学部の授業を受けやすくする改革が進んでいます。
千葉大学は9学部9大学院研究科・学府を擁する総合大学で、学部に約11,000人、大学院で約3,600人の計約14,600人の学生が学んでいます。国立大学としては珍しい看護学部や園芸学部、17歳で入学する日本初の「先進科学プログラム(飛び入学)(2)」を導入するなど、教育の先進性が特色で、グローバルCOEプログラムに2拠点が採択されるなど、卓越した研究力でも知られています。
理想の教育の実験
「先進科学プログラム」でエリート教育のあり方に一石を投じてきた千葉大学は、09年度の入試から、理数系の研究に熱意を持つ受験生を対象に新しい入試制度「理数大好き学生選抜(3)」を導入しています。高校時代に、SSH(4)での活動や千葉大学が主催する「高校生理科発表会」などのコンクールで優れた成果を残した受験生を選抜する制度です。
実施するのは園芸学部の全学科に、理学部と工学部の3学科を加えた計7学科で、詳細は各学科により異なりますが、高校時代の研究の成果が、合否判定の大きな要素となります。
優遇されるのは、入試だけではありません。この入試での入学者は、1年次から少人数制の特別コースを履修し、実験やセミナーでプロの研究方法を学びます。さらに、所属学科に専用の自習室が提供され、教授のそば近くで学び、指導を受けながら、自ら立案した特別研究に取り組むことで、早くから研究の進め方を習得します。
新しい入試制度導入の背景には、千葉大学が取り組んできた「高校生理科発表会」の実績がありました。発表会は、千葉大学が全国の高校に応募を呼びかけ、自由研究の成果をポスターで発表し、優れた研究を表彰する催しです。一昨年から開催し、昨年は447人が参加しました。
齋藤学長は語ります。「発表会に参加し、その後、千葉大に入学した学生に、目的意識が高く学問に強い関心を持った学生が多かったのです。
そういう学生にどんどん千葉大に入学して欲しいと考え、理数大好き学生選抜を始めました。これは、教育の一つの理想を追求する実験です。千葉大の◇◇先生の下で、△△の研究をしたいと、高い目的意識を持った学生が入学し、尊敬する師匠のそば近くで、心ゆくまで学ぶ。それが本来の教育の姿です」
人間作りの根幹「普遍教育」
20人規模のテーマゼミを導入
齋藤学長は「教職員が学生の近くにいて、学生とともに泣き笑いしながら学ぶ大学」を目指して、大学運営に汗を流しています。「重要なのは今だけではなく、これからの千葉大学の特徴は何かということです。教育に求められるのは知識の伝達だけではありません。学生を素晴らしい人間に育てるためにどのような役割が果たせるかが大切なのです」
齋藤学長が「人間作りの根幹」として特に重視しているのが、全学の学生が受講する普遍教育です。
教養展開科目には、講義と実習を組み合わせた授業を展開しているのが特色です。「子育てを考える」「アートをつくる」「カフェをつくる」「観光を考える」などユニークな科目が目白押しです。
また、「教員が学生の近くにいる大学」の実践として、今年度から普遍教育のカリキュラムに、20人規模で実施する少人数制のテーマゼミを15講座開講しました。「できれば、2、3人でやりたいところですが、そこまでは難しい。が、今後もスモールティーチングは拡大していきます」
テーマゼミには、留学生と議論する「異文化コミュニケーション」や、英語でのディスカッションを中心とする「環境から考える生活と世界」、さらには『日本文化を考える―「怨霊」を語る日本文化』など、多様なジャンルの講座が用意されています。
学部の垣根を低くし、
他学部の専門科目履修を柔軟に
各学部の専門教育では、学部の垣根を低くして、学生が自由に学べる環境作りに取り組んでいます。これまでも、医療機器の開発などを学ぶ工学部メディカルシステム工学科の学生が医学部の解剖学実習を見学するなど、必要と認められる学生に他学部の専門科目受講を許可する制度はありましたが、さらに、他学部の科目をより柔軟に履修できる制度を検討しています。
齋藤学長は語ります。「現代は、学問が一つの学部で完結する時代ではありません。医工、工理、医工理の融合にはこれまでも取り組んできましたが、文系理系の間でも融合を進めていきます。学生が、専門的な指導を受けて、自由にやりたいことを展開できる環境を作る。世界を舞台に活躍できる場を作る。それが、大学の役割です」
「夢を持ちなさい」
「控え目で内気と言われますが、実直で真面目に努力し、無謀ではなく、慎重に時機を見て飛躍しようとする魂をもち、最後に勝利をつかむ。それが千葉大生の気風です」
千葉大生の特徴をそのように語る齋藤学長は、受験生に呼びかけています。
「夢を持ちなさい。今の若い人には、夢を持つことをあえて避けるような傾向があるようです。が、逃げてはだめです。夢は、もちろん、変わっていってもいい。けれど、夢を持って、それを目指していくことが、若い時代にはとても重要です」

(2)先進科学プログラム(飛び入学制度) 大学に早期入学する制度。1998年に千葉大学が日本で初めて導入。高校3年に進級する年に入学し、独自の「先進科学プログラム」を履修する。「物理学コース」「フロンティアテクノロジーコース」「人間探求コース」の3コースに加え、今年度からは「物理化学コース」が開設された。これまで59人が入学し、34人の卒業生のうち33人が大学院で研究者への道を目指している。
(3)理数大好き学生選抜 実施する学科は、園芸学部園芸学科、応用生命化学科、緑地環境学科、食料資源経済学科、理学部生物学科、工学部メディカルシステム工学科、ナノサイエンス学科の計7学科。SSH活動などで行った理数の優れた研究を、千葉大学の個別試験に代えて評価する。
(4)SSH (スーパーサイエンスハイスクール) 文部科学省が、科学技術、理科・数学教育を重点的に行う高等学校を指定し、カリキュラムの開発や、大学・研究機関などとの連携の方策などについて研究を推進する制度。科学クラブなど、課外活動にも重点を置き、自由研究発表などの各種コンテストに積極的に学生を参加させる。
