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複眼的思考による「多言語主義」で
世界の多様性を理解する人材育成
山本純一(やまもと・じゅんいち)教授 長谷部葉子(はせべ・ようこ)准教授

2010年に創立20周年を迎える慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は、総合政策学部と環境情報学部(1)、看護医療学部の3学部と、政策・メディア研究科、健康マネジメント研究科の2研究科からなっています。ハイテクと自然が調和した未来型キャンパスで、塾生と教職員間の活発なコミュニケーションが図られています。

「未来創造カリキュラム」を実践し、多言語主義のもと言語コミュニケーション重視の立場に立って、外国語教育に力を入れ、「問題が与えられ、正解を教わる」教育ではなく、「何が問題かを考え、解決方法を創出する」人材の育成を目指しています。

世界の文化の多様性に
対応する“SFC多言語主義”

慶應義塾SFCの外国語教育の特徴は、英語以外の外国語も「実践的に活用できる」高いレベルまで学ぶことができるようにしている点です。その底流にあるのが多言語主義です。グローバリゼーションの流れが加速していますが、それでも世界は多様性に富んでいます。環境・生態系をはじめ地球科学の分野では、生物多様性の重要さが叫ばれていますが、多種多様の文化が存在することで人類の暮らしが豊かになることはいうまでもありません。

言語は、ペンやコンピュータのような道具ではなく、それ自体が文化の結晶です。多様な言語の一つひとつが世界の歴史・文化と未来への扉なのです。日本語と英語の“運用能力”を高めるとともに、もう一つの言語を本格的に習得することは、世界を見る「もう一つの視座」を手に入れることになります。これによって広い世界の現象を多角的・立体的に捉えることも可能になるのです。

世界の国々では中学・高校で、2つないし3つの外国語を選択して正課として学ぶのが普通です。SFCでは、このような言語習得のニーズに応え、多言語主義の言語教育を実践しているのです。

自由化、多様化、高度化目指す
未来創造カリキュラム

さて、SFCでは2007年度から新しいカリキュラム「未来創造カリキュラム」をスタートさせました。自由化、多様化、高度化の3点をポリシーに掲げています。具体的には、「研究会」(ゼミ)と学部最終学年における「卒業プロジェクト」(卒業論文・卒業制作)を教育の中心に据え、これらを必修とした上で、その他の必修科目を徹底的に少なくし、卒業単位の取得における義務的な拘束を極力外したのが特徴です。

この研究会と卒業プロジェクトに向けて、自ら未来創造を行う力を身につけるための「創造支援系科目」と、研究の前提・関連となる「先端支援系科目」、それに「シフト系科目(2)」の3タイプの授業科目群が用意されています。「創造支援系科目」には、キャリアデザイン、プログラミング、ナレッジスキル、言語コミュニケーションなどがあり、「先端支援系科目」には社会イノベーション、公共政策、地球と環境、生命と身体などが用意されています。

卒業プロジェクトでは、学生はメンター(学生の研究活動に対して指導と助言を行う教員)と協力しながら、論文の執筆や作品の制作を進めます。

新しい視座に立って
新しい言語に接する

このカリキュラムのもと、環境情報学部では外国語を学ぶ言語コミュニケーション科目が必修ではなくなり、総合政策学部では言語コミュニケーション科目を4単位修得する(一部科目を除く)だけになりました。

スペイン語を担当する山本純一環境情報学部教授は、「必修が4単位というのは4単位取得すれば充分というのではありません。ポリシーで自由化をうたっているとおり、自主的に他の外国語習得に挑戦することを意図しています。こうして複眼的に世界の事象をとらえていく思考力を養っていくのです。既存の大学の“第2外国語”的な考え方とはまったく異なっています」と説明します。

また、英語を担当する長谷部葉子環境情報学部准教授は、「入学して最初の1学期は英語を履修できないのがカリキュラムの大きな特徴です。なぜかというと、英語は新入生にとっても高校時代までに学んだ既習の語学ですが、他の外国語は初めて学ぶものです。新しい外国語に接することによって英語に対する取り組み方も変わってきます。すなわち、新しい視座で英語を含めた言語と付き合えるようになるのです。また、英語の授業科目はSFCプロジェクト英語(3)とGATEWAYの2本柱で構成されています」と語っています。

充実したサポート体制と
海外で学ぶ現場主義

SFCでは、学生の語学習得をサポートする体制を整えるとともに、現場を体験する海外研修も積極的に進めています。言語担当教員は、オフィスアワーなどを利用して学生に助言や履修に関する情報を提供しているのをはじめ、各言語セクションの研究室では、専任教員だけでなく非常勤講師として出講している教員や、ティーチング・アシスタント(TA)、スチューデント・アシスタント(SA)がいます。TAやSAは学生たちと気軽に話し、相談に乗ってくれるでしょう。

また、ESC(イングリッシュ・サポート・センター)では教育相談、文化交流イベントなどを主として学生の英語学習を支援しています。

このほか、学生が自学自習できるようWEBを積極的に活用しています。

夏休みなどを利用しての海外研修なども盛んです。例えば、スペイン語を履修した学生の一人は、カムカムというペルーの飲料に興味をもち、実際にペルーに行って現場でスペイン語を介してカムカムについて学んできます。自ら問題を発見し、解決していくというSFCの設立の趣旨に則った“現場主義”は、SFC外国語教育に脈々と息づいています。

山本教授と長谷部准教授は「ぺらぺらとしゃべれることを目指しているのではありません。コンテンツ(内容)が伴った高度な外国語能力を養うことを目指しています。新しい言語に接することはなんとスリリングなことでしょうか。それを実現できるのがSFCのキャンパスです」と受験生にエールを送っています。

 

 

 

 

 

 

 

SFC未来創造カリキュラムの全体像
(1)総合政策学部と環境情報学部 1990年、湘南藤沢キャンパス(SFC)に誕生した。総合政策学部は、21世紀の問題の発見と解決のプロフェッショナルを目指す。環境情報学部は、最先端のサイエンス、テクノロジー、デザインを駆使して社会に貢献する人材を育成している。
両学部合わせて100以上の研究領域があり、両学部の学生は、2つの学部を自由に行き来して学ぶことができる。つまり、どちらの学部に所属しても双方の授業と研究会を履修できる。
(2)シフト系科目 詰め込み型、暗記型、知識獲得型になりがちな高校までの勉学モードを、SFCで必要な創造的・先端的な研究モードに切り換えていくための科目。SFCで行われている先端研究の紹介や、創造活動の実践などを行う。
また、大学入学前の段階で不足している力を補う「リフレッシャー科目」も設置されている。
(3)SFCプロジェクト英語 スキルズ・ワークショップスとプロジェクト・ワークショップスからなる。スキルズ・ワークショップスは、アカデミック・ライティング、プレゼンテーションなどといったスキルの養成を目指す。プロジェクト・ワークショップスはドキュメンタリーの作成、マーケティングとブランド理論などアウトプット中心の内容となっている。
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