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分子から生物多様性まで
複眼的視点で生命を探求する

中央大学理工学部で初の生物系学科として設立された生命科学科は、2009年度に2年目を迎えました。「中大理工」ブランド(1)に新たな領域が加わったのです。実学的研究を重視する中央大学の伝統を受け継ぎ、幅広い分野で最先端の研究に従事しています。分子生物学的アプローチから生物多様性の保全と進化まで、人類が抱える地球上の諸問題解決のために取り組んでいます。

ヒトゲノムの解析が終わり、ポストゲノム時代を迎えた生命科学分野に対するニーズは高まるばかり。その中で、生命に関する知識を有する、教養ある職業人の育成を目指しています。

マクロとミクロを融合
高度専門職業人を養成

DNAの発見から50年間、生物分野ではDNA塩基配列などの遺伝情報をもとにして生命の謎に迫り、さまざまな生命現象が分子レベルで説明できるようになりました。ヒトの全ゲノム解析に象徴されるように、生命科学に対する社会的期待はますます高まっているといえます。

しかし、地球環境に視点を移せば、微視的アプローチだけでは解決は困難です。伝統的な科学分野に加え、新しい科学分野の融合が必要なのです。従来の分子生物学的アプローチを乗り越える「新たな発想」が必要な時代になったわけで、それこそが生命科学科の目指すものにほかなりません。人類が直面するエネルギーや環境、食料、人口といった問題から、生物多様性保全と自然再生まで、地球レベル・社会レベルの諸問題に貢献することが期待されているのです。生命科学科では、分子生物学的な微視的研究と、生態学や進化学といった巨視的研究との融合を目指した教育と研究を展開しています。

具体的には、初学者向けの基礎的生物学から、研究に直結した最新の応用生物学まで、4年間にわたって無理なく吸収できるようにカリキュラムを段階的に配置しました。実験系の科目の充実に加え、進化多様性生物学、生物環境情報学、バイオテクノロジー(2)、さらには生命科学英語や特許に関連する工業所有権法に至るまで、最先端のカリキュラムを実施しています。すなわち、生命科学科では、生物およびそれを取り巻く環境(生態系)を“生命システム”として総合的に理解するための理学的生命科学教育を展開しているのです。また、学生が「生命とは何か」や「生命を取り巻く環境」について学ぶことにより、道徳心に富んだ教養ある幅広い職業人を育成しています。

幅広い分野に対応した
多彩な最先端研究

中央大学では、実学的な教育方法としての「研究」を重視して、学生の研究・開発力向上を積極的に支援しており、生命科学科では8つの研究室を揃えて多岐にわたるテーマに取り組んでいます。

西田治文(にしだ・はるふみ)教授

例えば、西田治文教授の研究室では、生物の進化と多様性について地球規模でフィールドワークを展開しています。過去の植物の組織や細胞が残された鉱化植物化石を調べることにより、その植物の形だけでなく、何億年前というその植物が生きていたときの生活の様子も伝えてくれます。スイレン目は最も原始的な現生植物のひとつで約1億年前の化石が見つかっていますが、化石のDNAを解析し、現在の植物ゲノムの塩基配列と比較することで過去の進化の辿った道を教えてくれます。分子レベルと化石における進化の双方を比較解析することにより、植物の進化の源流を探索できるのです。

また、「鉱化ゴミ化石」と名づけたミリ単位以下の破片を分析することで、小さなコケや着生植物、菌類など多様な植物相を今までと異なる視点で復元しています。2002年からは、ほぼ毎年チリ南部のパタゴニアで海外調査を行っています。

諏訪裕一(すわ・ゆういち)教授

諏訪裕一教授の研究室では、自然の浄化力とそれを担う微生物を知り、さらに応用につなげることを目的として研究を進めています。自然環境で窒素が流れ込むと光合成を行う藻類が繁殖を始めます。藻類はやがて死滅し、死骸から出る有機物が元で水が酸欠状態になり、飲料水を通して人間の健康にも悪影響が及びます。これを未然に防ぐには、自然環境への窒素分の流出を減らさなければなりませんが、その窒素浄化を担う細菌を研究しています。アンモニアを食い尽くし環境浄化に役立つ硝化細菌を分離し、その微生物の持つ遺伝子の暗号を解読したり、窒素浄化微生物アナモクス細菌の働きを高感度ですばやく測定する方法を確立し、新種のアナモクス細菌の存在を明らかにしています。

岩舘満雄(いわだて・みつお)准教授

岩舘満雄准教授の研究室のテーマは、タンパク質に関するさまざまなデータを医薬品開発に役立てるバイオ・インフォマティクスです。薬学の領域でありながらコンピュータや数学や物理はもとより、生物、化学の知識も求められる分野といえます。例えば、ガン疾患に関連するタンパク質の働きを薬品で抑えることにより、ガンの進行を抑制することができますが、このような薬品の開発を効率化するための技術として、タンパク質と薬品との相互作用を完全自動で予測する「インシリコ技術」開発を進めています。このため、タンパク質の立体構造の解析に力を注いでいます。タンパク質の立体構造はまだ1%しか判明していないのが現状で、コンピュータを使い、DNAの遺伝子配列を立体構造に変換できるプログラムを開発することを目指しています。

このほかの研究室では、光合成微生物・ラン藻(シアノバクテリア)の遺伝子発現調節機構の解明、産業利用に適した酵素を持つ微生物のスクリーニングと酵素の改良、極限環境に生きるラン藻の適応戦略、生体高次振動メカニズムの解明、べん毛・せん毛形成の分子機構など生命の神秘の解明に挑んでいます。

生物への興味満たす
数多い選択肢を用意

生命科学科では、「生物学を学び生命とは何かを考えたい」「地球環境問題についてより深く学びたい」「バイオテクノロジーの研究に興味がある」「細胞の神秘を解き明かしたい」「人間の活動や病気を分子レベルで理解したい」「生物の活動をコンピュータでシミュレーションできないか?」など、生物に関して興味を持っている人に幅広い選択肢を用意しています。

分子や微生物に興味を持つ人から、地球環境や生物多様性に好奇心を持つ人まで、新しいものにチャレンジし、自分を見つめ直したい人は、ぜひ生命科学科で学んでみませんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健康と医療、高齢化・少子化、
エネルギーと環境など実社会に出て役に立つ生命科学を学ぶ。
(1)「中大理工」ブランド 教員公募時には数十倍の高人気を博することから分かるように、地の利と研究の質・量を誇る中大理工は、学術・産業界に名を馳せる有名ブランド。大学院理工学研究科生は、2008年度に374件の学会等発表実績を有する。平均すれば毎日1件以上という他大学の追随を許さない世界水準の知的生産力を誇る。求人件数も各学科で性別を問わず3,000件にも達した。
(2)バイオテクノロジー バイオテクノロジー(生物工学)とは、生物学の知見をベースに、実社会に有用な利用法をもたらす科学技術の総称。特に遺伝子操作をする場合には、遺伝子工学と呼ばれる場合もある。具体的には、醸造・発酵の分野から再生医学や創薬、農作物の品種改良などさまざまな技術を包括する言葉で、農学、薬学、医学、歯学、理学、獣医学、工学などと密接に関連する。クローン技術や遺伝子組み換え作物などでは、倫理的な側面や自然環境との関係において、多くの議論が必要とされている分野でもある。遺伝子操作および細胞融合は、生物多様性に悪影響を及ぼす恐れがあるとの観点から、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法、遺伝子組換え規制法)によって規制されている。
(3)国際会議 2012年夏には、理工学部キャンパスで国際花粉学会・国際古植物学会の合同大会が開催される。4年に一度開かれるこの分野のオリンピックのような国際会議である。花粉アレルギーから、花粉分析による過去の環境推定、植物の進化の歴史など幅広い研究内容について最新の成果が披露される。
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