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エネルギー循環型社会へ向け
“農学新時代”を切り拓く
大澤貫寿(おおさわ・かんじゅ)学長

東京農業大学は、「食料」「環境」「健康」「バイオマスエネルギー」をキーワードに、1891年創立以来の建学の精神である実学主義(1)のもと、先進的な教育・研究を進めています。温暖化や異常気象、枯渇化する化石燃料、慢性化する食料危機といった環境異変の中で、人類や地球のために多方面で活躍できる人材を育成し、エネルギー循環型社会の実現を目指しています。最先端のゲノム(2)分析から山村再生・活性化プロジェクトまで、地球の生き物に関わる幅広い領域をカバーする東京農業大学の役割は、ますます大きくなっているのです。

アグリイノベーションに
即した最先端の研究

東京農業大学は従来の農業の枠を超えた、幅広い生物関連産業を支える学問分野である「農学」「生命科学」「環境科学」「バイオ産業学」などを中心に先端的な教育研究を展開している、国内外でも類を見ない農学系総合大学です。世田谷、厚木、オホーツクの3キャンパスに6学部21学科を擁し、栽培・育種・醸造といった伝統の分野から最先端の分子生物学まで、幅広い分野を網羅しています。

大澤貫寿学長は「石油・石炭などの地下資源を利用したエネルギー文明は終焉を迎えつつあります。化石燃料の枯渇化に替わり、海も含めた“地上エネルギー”の時代です。そのためには生物の多様性の維持が必要であり、植物や微生物など将来有用となる生物資源を育て活用するための研究や教育が重要です。アグリイノベーション(農学新時代)の到来ですが、東京農大にはそのノウハウが蓄積されています」と話します。

その“新しい農学”を象徴するのが、「革新的ゲノム情報解析を用いた生物資源ゲノム解析と農学新領域の創出」プロジェクトです。この事業は文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」として採択されたもので、本格的研究開始に向けて今年4月からトレーニングが開始されました。農学系大学としては初めての生物資源ゲノムの研究拠点です。学内40名の研究者をコアメンバーとして学外研究者と協力し、イネや日本在来のウシ、有用微生物の各ゲノムを解読するといった「ゲノム研究」にチャレンジします。

また、バイオマスエネルギーセンターでは、バイオマスが地域のエネルギーとして貢献するための産学プロジェクトを展開中です。

実学主義の教育理念を生かした
ユニークなプロジェクト

実学主義の教育理念を生かした試みにも積極的に取り組んでおり、食料環境経済学科の「地域再生・活性化の担い手育成教育」と短期大学部の「学生と教員の協働による学科横断的実学教育」が、平成20年度からスタートした文部科学省の「質の高い大学教育推進プログラム」(教育GP)に採択されています。

前者は、長野県小県郡長和町をフィールドに、学生が山村生活を通して地元住民と交流し、和紙原料の楮(こうぞ)やトロロ葵、ダッタン蕎麦などの栽培・販売や植林・枝打ち、炭焼きなどを体験。伝統文化の維持再生や荒廃農地の活用、食料自給率向上などに取り組むとともに、地域再生・活性化を担う人材を育成しようというユニークなプロジェクトです。

一方、短期大学部のプロジェクトの特徴は、入学時から学科横断的専門教育科目と初年次教育とを合わせて履修するという新たな試みにあります。これにより、学生一人ひとりに自分の学ぶ専門分野を明確にさせ、学ぶ動機付けを強くすることを目指します。学科横断的専門教育科目では食農体験実習などを新設し、農産物の生産から消費に至るまでの広範な学習を、学生と教員が協働して進めることを目標としています。

 

平成22年度からは養成目標を明確にしたカリキュラムの全面改定も実施し、教養科目やリメディアル教育の充実を図ります。また、「食」は単に生命の維持だけではなく、アロマなど精神の安定の向上にも貢献するようになってきましたが、食品科学科では、食品化学と香粧科学の融合を目標にカリキュラムを再編成。平成22年度から学科名を「食品香粧学科」に変更します。

地方の中核となる人材育成へ
きめ細かな就職支援

“就職に強い”という定評のある東京農業大学ですが、キャリアセンターと学科、研究室が三位一体となって、きめ細かい支援体制を展開。一過性の就職テクニックを身につけるのではなく、4年間にわたって本質的な支援を行っています。

「“人物を畑に還す”という建学精神を、就職面では“人物を地方に還す”として、より積極的なキャリア支援を展開しています。地方再生・活性化のための中核的人材やリーダーを育てようというものです。全国の現場から、東京農大の卒業生がわが国の農政に提言できるようにしたい。そのために、キャリアセンターでは県庁などの公務員を目指す学生を募り、選抜して教育するシステムを今年度から採り入れました」と大澤学長。

このほか、一般の求人情報サイトとは異なり、東京農大生を募集する企業からの情報のみを集めたインターネット検索システム「農大キャリアナビ」も充実しています。

地球規模の取り組みで
環境問題に貢献

環境については、国内ばかりでなく国外でも活発な活動を展開しています。世田谷キャンパスではすでにISO14001(3)を認証取得していますが、これを機に学生サークル「ISOの部屋」(通称いそべや)が設立され、大学生協のレジ袋削減やエコバックの普及活動などに取り組んでおり、こうした環境改善に取り組む学生を「環境学生(4)」と呼んでいます。

その世田谷キャンパスでは、平成21年夏にグラウンドが人工芝に生まれ変わるのをはじめ、同年秋からは新講義棟の建設に着手するなど、さらなる整備が進んでいます。

国外では、アフリカ・エチオピアで沙漠化防止と緑化運動を開始しました。また、飢餓と貧困に直面するアフリカで、「東京農業大学宮古亜熱帯農場」で培ったノウハウを活かしてタロイモ栽培の指導を行うなど、国際貢献にも一役買っています。

大澤学長は「21世紀を迎え、東京農業大学の守備範囲は無限の可能性を秘めています。これからの農学は、人類や生物の将来を担っているといっても過言ではありません。生物に関わる“グリーン産業”のすべてに関連しているのです。ぜひこれらにチャレンジしてほしい。若い人たちが新しいテーマに挑戦すべき領域が、東京農業大学には揃っています」とメッセージを送っています。

 

 

 

 

 

 

地球上に生きるすべての動物・植物・微生物と向き合い、
人間との新たな関係を見つめる。
山村再生プロジェクト──地域再生・活性化の担い手育成教育
(1)実学主義 初代学長横井時敬が唱えた。「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」という言葉で表される。農学は総合的な学問であり、建学精神の「人物を畑に還す」を基盤としている。
(2)ゲノム 遺伝子(gene)と固まりを意味する「-ome」の合成語で、ある生物がその生物として生きていくのに必要な1組の遺伝情報のセットのこと。ゲノムにはその生物に必要な遺伝情報がすべて組み込まれており、現在、ヒトを含めた種々の生物のゲノム分析が行われている。
(3)ISO14001 国際標準化機構(ISO)が1996年に制定した規格で、組織(企業・自治体など)に対して環境に負荷をかけない事業活動を継続して行うように求めた規格。ISO14001を認証取得するということは、社内的に環境意識を意識づけるだけでなく、対外的にも環境に対して取り組みを行っている企業であるということをアピールすることになる。
(4)環境学生  「農」の知恵を生かし、人間の生存環境に関する問題に関して、自ら気づき、自ら考えて、その保全や改善のために行動する学生を、東京農業大学では、「環境学生」(東京農業大学の登録商標)と称する。
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