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“創造なき伝統は空虚”を胸に
“文明転換期”を切り拓く人材育成
中村信一(なかむら・しんいち)学長

加賀藩種痘所を源流とし、国立大学として日本で3番目に古い起源をもつ金沢大学は、2008年4月、3学域・16学類の大学へと生まれ変わりました。従来の学部・学科の枠を取り払った大変革で、ポスト工業文明の時代を迎えた社会のニーズに応えるべく、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を目指しています。伝統と最先端が融合する文化創造都市「金沢」の地に、緑豊かな広大なキャンパスが広がる恵まれた環境の中で、21世紀を切り拓く多様な人材を養成しています。

柔軟で選択の自由度が高い
3学域・16学類がスタート

多様化、高度化が加速する現代社会で、大学はどうあるべきか。どのような人材育成をし、新しい“知識づくり”をしていくのか? 「金沢大学憲章(1)」で「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を謳う金沢大学がたどり着いたその答えが学域学類制の導入です。

この大改革により、金沢大学は従来の8学部・25学科・課程から3学域・16学類に生まれ変わりました。「人間社会学域」「理工学域」「医薬保健学域」の3学域に再編し、選択の自由度の高いシステムで、広い視野を持ち、応用力と創造力に富む人材育成を目指すものとなっています。

大学院を部局化し、5年一貫としての大学院教育を強化することで、教育組織にとらわれない領域横断的な研究や文理融合型の研究を推進できるようにしました。また、教育組織と研究組織を分離したことも大きな特徴となっています。

学域で「知」の融合を目指し
全人的な教育を実施

人間社会学域は、人間とその社会が直面する21世紀の激変する諸問題を探求する新しい学域で、「人文学類」「法学類」「経済学類」「学校教育学類」など6学類からなります。

新たに誕生した「地域創造学類」「国際学類」では、地域社会、国際社会の厳しい現実を見つめ、自ら改革していくリーダーを育てます。

理工学域は、深化、学際化する理学・工学の分野を融合・再編したものです。「数物科学類」「物質化学類」「機械工学類」「電子情報学類」「環境デザイン学類」「自然システム学類」の6学類を通じて幅広く基礎を学んだ後、専門コースで知識や技術を磨き、地球と人間の将来に責任が持てる科学技術の専門家を育てます。

医薬保健学域は、従来個別に行われてきた医学系教育を連携して実施するために、「医学類」「薬学類」「創薬科学類」「保健学類」の4つの学類に再編された学域です。それぞれの専門性をベースに、チームで学ぶ「コメディカル教育」を4学類連携によって実施し、全人的医療を担う人間性豊かなメディカルスタッフを育成します。

ポスト工業文明を見据えて
「学生のための大学」実現

中村信一学長は、「産業革命以来の大量生産・大量消費をパラダイムとする工業文明が終焉を迎え、ポスト工業文明への流れが加速しています。温暖化にしても行政の知識、工学、農学などが複雑にからんでいます。また、高度なチーム医療が求められる今、“医”と“薬”の領域が一体となって進まなければいけません。こうした時代背景の中で、21世紀を切り拓く人材を育成するための大学改革なのです」と説明します。

 

「日本は世界でも類を見ない急激な少子高齢社会を迎えましたが、このため若者が人生の方向を決定する時期がずいぶん遅くなりました。3学域・16学類はそれにも対応しています」(中村学長)

「経過選択制」により
じっくり将来の道を考える

大学の基本単位を「学域・学類」とすることで、入学前に自分の将来の専攻を絞り込むのではなく、大きな枠組みの中でじっくりと基礎を学びながら、自分が本当にやりたいテーマを探すことができるようになりました。

それを具体化した制度が「経過選択制」です。人間社会学域と理工学域では、主に2年次に自分の志望や適性に合わせて専門領域のコースを選びます(コースによっては3年次からもあります。また、医学類と保健学類は資格取得の関係から「経過選択制」は採り入れていません)。

近年、若者のニートや引きこもり、さらに自分の進むべき道が分からず、留年するといった学生のモラトリアムが社会問題となっていますが、学域・学類の導入によって、しっかりと将来の道を見据えることができると期待されています。

“多彩な学び”の提供とその支援
地域と世界に開かれた社会貢献

「学生のための大学」を標榜する金沢大学では、多彩な「学び」を提供するとともに、きめ細かい学びの支援を実施しています。

その一つが「アドバイス教員制度」です。入学時点で、学生一人ひとりに担当の教員を割り当て、4年間にわたって1対1で学業や大学生活に関する相談や指導に応じるというもので、定期的に成績表を直接手渡すのをはじめ、時には面談も行います。

「アカンサスポータル」も充実しています。インターネットによる学内Webのことで、科目履修や学生生活に関するすべてをサポート。レポートや宿題、復習、出欠のチェックなどが可能となっています。

画期的なのが、入学から卒業までの学習履歴を蓄積する進路シミュレーター「ポートフォリオ・システム」。06年度から学生のノートパソコンが必携となりましたが、年内には全学生の学習履歴をコンピューター上に置き、学生と教員が双方向で連絡を取り合うことができます。

大学生活のスタートをサポートする導入教育では「大学・社会生活論」と「初学者ゼミ」が必修となっています。初学者ゼミは08年度から始まったもので、少人数によるコミュニケーションを主体にしたディベートで進めていきます。このほか、学生と教員が昼食を共にして情報を交換し合う「角間ランチョンセミナー」や、先輩学生が授業や学生生活について気軽に相談に応じる「なんでも相談室」「ピア・サポート・ルーム」などがあります。また、公務員試験対策講座(2)も充実しており、08年度の国家公務員II種試験(行政)合格者は国公立大学中トップ(3年連続)を誇っています。

 

東アジアのアカデミアの拠点として、世界に向けて情報発信。
地域と世界に開かれた総合大学として進化し続ける。
学域・学類
(1)金沢大学憲章 
金沢大学の活動が21世紀の時代を切り拓き、世界の平和と人類の持続的な発展に資するとの認識に立って、その拠って立つ理念と目標を金沢大学憲章として、04年度に制定した。
(2)公務員試験対策講座 在学生と卒業生を対象に生協とタイアップして開講。プロの講師による授業を、講義後や夏休みに受講できる。講座のほかにも「公務員就職ガイダンス」「学内官庁説明会」などを開催し、必要な情報を提供している。
(3)主専攻・副専攻制  主専攻に加えて自分の興味や関心のある分野を学べる「副専攻」を整備。主専攻は所属するコースで専門科目として履修する学問分野で、主専攻の名称は卒業証書に学位として記載される。一方、副専攻は学類・コース・専攻の区分を超えて授業科目を履修する。選択科目枠を利用して履修し、単位を修得することでその分野を副専攻として修了したことが認定される。
(4)広大な緑のキャンパスから. 世界へ飛躍  金沢市街を見下ろす、緑豊かな角間キャンパスを拠点として国際貢献を展開する金沢大学。東アジアの研究を推進し、感染症の研究や、スマトラ沖地震における寄生虫調査、アンコールワットの修復調査など地道な成果を挙げている。また、イタリアのサンタ・クローチェ教会の壁画修復事業も行っている。
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