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「自由の学風」の伝統を継承し、
自学自習の学びを堅持する
松本紘(まつもと・ひろし)総長

古都京都の東に位置する京都大学は、「自由の学風」と「自学自習」の教育で知られる、日本を代表する総合大学です。7人のノーベル賞受賞者(1)を輩出するなど研究分野での存在感は他大学を圧倒し、多くの分野で世界的な研究者を育ててきました。研究型大学らしく、教育の特色は研究のプロセスに学生を参加させることにあります。大学院の重点化に取り組み5つの独立研究科が誕生するなど、改革も進行中です。昨秋就任した松本紘総長は、「国際化の基盤整備を進め、魅力、活力、実力を備えた世界最高水準の大学に仕上げていく」と、決意を語っています。

京都大学は日本屈指の研究型大学です。日本人初のノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士をはじめ、7人のノーベル賞学者が学んだり、研究を行ったりしたことで知られています。英国タイムズ紙の世界大学ランキング(2008年)で25位、朝日新聞の大学ランキング(2010年度版)では、大学学長からの評価部門の総合と研究力で、ともに日本でトップにランクされました。

7人のノーベル賞学者を輩出した
研究型大学

ノーベル賞学者を多数輩出した自然科学だけでなく、人文社会科学でも、西田哲学など「京都学派(2)」として知られる独自の学問の流れを築いてきました。近年では、iPS細胞(3)研究センターや、チンパンジーの研究で知られる霊長類研究所などの先端的研究が世界的な注目を集め、グローバルCOEプログラムには、募集のあったすべての分野で計13の拠点が採択されています。

大学改革も進んでいます。重点化に取り組んできた大学院には、人間・環境学研究科、エネルギー科学研究科、アジア・アフリカ地域研究研究科、情報学研究科、生命科学研究科、地球環境学堂・学舎、法科大学院(専門職大学院)、公共政策大学院(同)、経営管理大学院(同)が誕生し、分野融合的な研究・教育を強力に推し進めています。

社会の潮流からの自由
時の権力からの自由

京都大学の特色は「自由」の一言に尽きます。「自由の学風」は今も息吹き、京大といえば「自由」という言葉が連想されるほど、社会からも認知されています。その学風から醸成されたのが「自学自習」の伝統です。学問は他者から強制されるものではないとの考えから、学生が自発的に問題意識を持って授業に参加し、積極的に自ら学ぶ、というのが「自学自習」の有り様です。

松本総長は、学問の府の自由について、「社会の潮流からの自由」「時の権力からの自由」と述べています。「自由の伝統は、建学の趣旨に由来するものです。国家の統治機構を支える官僚養成の役割を担って設立された東京大学に対し、京都大学は中央から距離を置いた京都に、研究の大学として創立されました。時の権力の要請や社会の潮流に左右されず、純粋に研究に没頭する。それが、自由の学風です」

最先端の研究に触れる
ポケット・ゼミ

あらゆるジャンルの学問が学べることは、京都大学の大きな魅力です。1、2年次は主に、教養科目や外国語科目、専門基礎科目などの全学共通科目を履修します。毎年1,000科目近くが用意され、新入生には少人数制のポケット・ゼミ(4)で、最先端の研究に触れる機会も提供されています。

 

全学共通科目の履修要件は学部により異なりますが、必修科目は少なく、人文・社会科学、自然科学などの大枠が示されるだけで、学生の自由度が高いシステムになっています。さまざまな分野の学問に触れることで、学生の「学術的素養」と「基礎的知力」を鍛え、自ら進んで学ぶ自学自習の習慣を身につけさせることが狙いです。

松本総長は語ります。「卒業生は、社会のリーダーとして役割を果たすことが期待されます。そのためには、専門分野だけでなく、専門以外の分野の幅広い素養や周辺知識をどん欲に獲得し、多元的に判断し、物事を 見抜く力量が求められます。京都大学での学問は、受け身の姿勢のままでは成り立ちません」

また、専門教育では、「研究のプロセスに参加させること」を教育の特色としています。理系の学部・大学院では、学生は研究室に所属し、研究に参加しながら学びを進めていくスタイルが継承されています。

魅力、活力、実力を備えた
世界最高水準の大学へ

松本総長は、「自他共に認める、魅力、活力、実力を備えた、世界最高水準の大学に仕上げる」ため、さまざまな改革に着手しています。教育部門では、全学共通教育の改革、自学自習の支援体制の充実、教育環境整備を進めています。

全学共通教育では、「学生がさまざまな分野を勉強したくなるような」体制とするため、共通教育のコアとなる教員集団の組織化に着手しました。自学自習支援のためには、図書館に24時間オープンの自習スペースをつくったほか、学内に学生同士や学生と教員が対話できる空間をさらに整備する計画です。来年度には、既存の学部に収まらない学際領域の研究を志す学生を集めて教育・研究する総合棟の建築にも着手します。

大学の国際化も推進します。世界の共通語となっている英語で教育を受けられるだけでなく、日常生活も含め、言語の障壁を取り除く環境整備に取り組み、10年後には、欧米も含めた世界各国から優秀な学生が集う大学を目指しています。

「グレーゾーンの問題を解決できる
リーダーを求める」

松本総長は「白黒をつけがたい、社会のグレーゾーンの問題を解決できる、社会のリーダーたらんとする学生」を求めています。「学問は難しいことではなく、面白いことです。難しいのはグレーゾーンでどのような判断を下すかということです。その能力は学問によって磨かれます。自分を磨いて、自分の力で社会のリーダーになろうという志を持った学生は、ぜひ、挑戦してください」

 

 

 

 

日本屈指の研究型大学。研究のプロセスに参加させる教育。
言語障壁を排除し、世界から学生が集う大学へ。
京都大学吉田キャンパス
(1)ノーベル賞受賞者 京都大学を卒業した、湯川秀樹(1949年物理学賞)、朝永振一郎(1965年物理学賞)、福井謙一(1981年化学賞)、利根川進(1987年生理学・医学賞)、野依良治(2001年化学賞)の5博士がノーベル賞を受賞。更に、2008年に物理学賞を受賞した益川敏英博士は、基礎物理学研究所教授、理学部教授などを歴任。同時受賞の小林誠博士は理学部で助手を務めた。
(2)京都学派 国内外で研究の対象とされるほど、その明確な定義はない。一般には、戦前に西洋哲学と東洋思想の融合を目指した哲学者、西田幾多郎を源流とする哲学研究の潮流や、戦後、京大人文学研究所を舞台に議論を闘わせた貝塚茂樹(東洋史学)、桑原武夫(フランス文学)、今西錦司(生態学)らの交流などを総称して、京都学派と呼ぶ。
(3)iPS細胞(Induced pluripotent stem cells)  人工多能性幹細胞。2006年、京都大学の山中伸弥教授が、世界で初めて樹立に成功。多能性(万能)細胞とは、初期胚のES細胞のように、分化万能性と自己複製能を持ち、個体のさまざまな細胞になる可能性をもった細胞をいう。理論上、多能性細胞からあらゆる臓器が形成できると期待される。実験に受精卵を用いることから倫理的に問題視されるES細胞に対し、iPS細胞は皮膚細胞などから人工的につくられるため、再生医療の切り札として、国際的な開発競争が繰り広げられている。
(4)ポケット・ゼミ  学問とは何か、最先端の分野で何が行われているかなどについて、教員が学生と語りあい、さまざまな研究フィールドに誘う、いわば「京都大学そのものへの入門」の授業。定員は10人前後で、学内のすべての大学院、研究所などの教員が担当し、毎年150前後の科目が用意される。
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