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教養・デザイン力・国際性を教育目標に、
「阪大スタイル」の確立を目指す
鷲田清一(わしだ・きよかず)総長

大阪大学は、先見性と機動性を特色とする総合大学です。大阪外国語大学との統合により、昨春、総合大学では唯一の外国語学部が誕生し、学部学生数が最大の国立大学となりました。教育目標には「教養」「デザイン力」「国際性」を掲げ、その教育を実践するため、演劇やアートの手法を取り入れたコミュニケーション教育など、ユニークな教育プログラムを開発しています。鷲田清一総長は、“阪大スタイル”の確立を目指し、大学改革を進めています。学部大学院を通じ高学年になるほど教養教育を重視していることや、学際的な新しい学問領域の創成に積極的なことなどが、阪大スタイルです。

世界ランク44位(国内3位)
先見性と機動性の伝統
世界25か国語が学べる総合大学

1931年に誕生した大阪大学は、町人の学問所・懐徳堂と医学所・適塾(1)をその源流とし、設立当初から、社会のニーズに応えた先駆的な学問に取り組む先見性と機動性を、学風として育んできました。基礎工学部(2)人間科学部(3)はその象徴といえます。

世界的評価も高く、英国タイムズ紙の世界大学ランキングでは44位(2008年)にランクされ、国内3位の評価を受けています。

大学改革も進行中です。外国語学部の誕生と同時に、大学院には人間科学研究科グローバル人間学専攻、言語文化研究科言語社会専攻など3つの専攻が新設されました。また1学年の学部学生数は国立大学では最大の約3,500人となりました。

外国語教育も充実しました。世界の言語と地域研究を専門とする大阪外国語大学との統合により、学部で履修できる第2外国語は、従来の仏、独、露、中に、スペイン、韓国・朝鮮、イタリアを加えた7カ国語になりました。今後は、世界の25の言語を、希望する全学の学生が履修できる体制を順次整える予定です。

critical thinking
transcultural communicability
synthetic imagination

教育目標に掲げる「教養」は複眼的にものをみる力、「デザイン力」は構想力、「国際性」は異質な文化的背景を持った人々と意思疎通ができる能力と説明されています。

鷲田総長は語ります。「教養や国際性は目新しくありませんが、大阪大学ではその定義にこだわっています。教養はcritical thinkingと英訳しています。幅広い知識をもとに複眼的にものを見る力であり、確かな社会的判断力とも換言できます。国際性の訳語はtranscultural communicabilityで、国内での国際性も重視しています。日本社会は多文化共生社会であり、国内にも文化的背景を異にする他者がたくさんいます。そのような人々と共生できる力を国際性と捉えているのです」

デザイン力は大阪大学独特の言葉で、synthetic imagination &good senseと英訳されています。「デザイン力は、専門領域にこだわらず、ある事柄を明らかにするためにはどの分野と協力し、どのような研究シフトを組めばよいかを構想する力です。学問の方法より先に課題を置き、問題解決のために学問のネットワークを構想する力を、デザイン力と定義しています」(鷲田総長)

演劇の手法を取り入れた
コミュニケーション教育

目標とする教育を実践するため、04年に大学教育実践センターを、06年にコミュニケーションデザインセンター(CSCD)(4)を、07年にはグローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)(5)と世界言語研究センターを設立しました。

大学教育実践センターは、教養教育の司令塔で、全学教育のカリキュラムを開発・実施しています。GLOCOLは大学院のすべての研究科に共通する国際教育に関する科目を提供し、世界言語研究センターは外国語教育の中核を担います。

CSCDは主に大学院生を対象に、教員と学生が専門の垣根を取り払って議論する「コミュニケーションデザイン科目」を提供しています。同科目には、演劇やアートの手法を取り入れたコミュニケーション教育科目や、大学主催のイベントに「企画から打ち上げまで参加する」(鷲田総長)フィールド型の科目などユニークなプログラムが多数あり、科目の一部は学部生も受講することができます。

専門が深化する高年次ほど
教養教育を重視する

鷲田総長は、“阪大スタイル”の確立を目指し、大学改革を進めています。教育部門では、学部・大学院を通し、高年次になるほど教養教育を重視するのが阪大スタイルです。鷲田総長は語ります。

「専門が深まるほど、視野は狭くなりがちです。一方、研究の成果は社会に大きな影響を与えます。ですから、専門が深化するほど、複眼的な広い視野を持って自分の研究を社会的に位置づけるために教養が求められるのです」

大学院では昨年度から高度副プログラムが始まりました。複眼的視野の涵養が狙いで、今年度は20のプログラムが提供されています。前述したCSCDも、大学院生の教養教育を重視した取り組みです。

研究分野では、人間科学部に象徴される新しい学問分野の創成が阪大スタイルです。時代が求める新領域や複合領域の研究を推進するため、大学院には学部と連動する伝統分野の研究科に加え、国際公共政策研究科、情報科学研究科、生命機能研究科などの新分野の独立研究科を次々と開設し、15研究科のラインナップとなっています。

「学び終わったときに、世界の
見方が変わっている」

日本を代表する哲学者の一人でもある鷲田総長は、大学での学びについて、次のように語っています。

「それまで馴染んでいなかったものの見方や考え方に感染し、それを学び終わったときに、世界の見方が変わっている。そういう経験が起こることが、本当の学びです。大学で大切なことは、自分の見方とは違った見方にたくさん触れることです。世界を見る私たちの視野は決して広くありません。自分が見ている小さな世界を大きく広げていく。そのために学問はあります」

 

 

 

 

 

 

「世界を見る私たちの視野は決して広くありません。
自分が見ている小さな世界を大きく広げていく。そのために学問はあります」
大阪大学の教育目標
(1)懐徳堂と適塾 懐徳堂は1724年、現在の大阪市中央区今橋に創設された町人のための学問所。文系学部の源流と位置づけられている。適塾は1838年、緒方洪庵によって創設。種痘法やコレラ治療法に取り組んだ。医学部の源流で、福沢諭吉らを世に送り出した。
(2)基礎工学部 「科学と技術の融合による科学技術の根本的な開発」を理念に1961年に創設。我が国唯一の学部。
(3)人間科学部 1972年創設。人間をめぐる問題に総合的学際的に取り組んだ日本で最初の学部。自然、社会、人文科学のあらゆる手法を縦横に用い、人間を理解しようとする「人間科学」は、その後、多くの大学に広がっている。
(4)コミュニケーションデザインセンター(Center for the Study of Communication-Design) 専門知識のある人とない人や、利害や立場の異なる人々の間をつなぐコミュニケーションの回路を構築・設計することを「コミュニケーションデザイン」と定義し、大学院生を対象にコミュニケーション教育を提供する。扱うテーマは、科学技術、減災、臨床コミュニケーション、アート&コミュニケーション、デザイン&メディアの5つで、劇作家で演出家の平田オリザ教授や、科学哲学の小林傳司教授、医療人類学の池田光穂教授ら、スタッフの顔ぶれは多彩。
(5)グローバルコラボレーションセンター (Global Collaboration Center) 国際協力と共生社会に関する研究をさまざまな学問分野の協力により推進し、真の国際性を備えた人材養成のための教育を開発するとともに、その成果等に基づく社会活動を実践する。
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